映像とことば 

　　　　　　　　　　　　　　　　園長　田中　裕

　小学生の男の子が友達を家に呼んで遊んでいるのに、やけに静かにしています。お母さんがやや不審に思って部屋をのぞくと、男の子たちはひとりずつゲーム機に向かってそれぞれが無言で格闘中。―こんな光景が今、当たり前のようになっているそうです。男の子が家で遊ぶとあっちこっちに穴があいて大変などというのは昭和の光景なのでしょうか。３Ｄ映像と目の健康が話題になったことがあります。３Ｄ映像は以前ほど流行してないようですが、6歳までは立体視の発達期なので目や脳がうまく順応できないといわれています。３Ｄ映像特有のピント合わせへの適応力はおとなにも個人差があるので、人によっては目の疲れや物が二重に見える症状、子どもによっては斜視になる可能性もあるようです。

　３Ｄではなくとも、テレビ・ビデオの影響は言葉の発達とも関係しています。メディアの視聴時間が長い子ほど言葉の数が少ない傾向があり、アメリカ小児科学会では「満2歳以下の子どもには脳の発達を阻害する恐れがあるのでテレビを見せるべきではない」と1999年に発表しています。つまり、受動的に映像を見るという子どもの活動が主体的な思考を失わせるということだと思います。言葉や単語を覚えるだけの認知教育は言葉悪く言えばオウムの口真似のようなもの。アルファベットや漢字を教えている幼稚園もあるようですが、言葉は子どもの心の動き―喜んだり、泣いたり、怒ったり、といった心の高ぶりによって体得され、生きた言葉として子どもの内側に心のひだを形成していくのです。日々、感情が揺さぶられるような生活をめざして保育にあたりたいと思います。

　（参考：阪大大学院、不二門尚教授　小児科医、家島厚先生）